Seria Net
No.05


栄養講座

食後のデザートは別腹?
レストランで豪華なディナーをいただき、あとはデザートを待つだけとなりました。もしデザートが「ステーキ」とか「鰻の蒲焼き」だったら、あなたは食べられますか?デザートは果物やアイスクリーム、ケーキなど相場が決まっています。
ではなぜ、食後にカロリーの高いデザートは食べれても、ステーキは食べられないのでしょうか? 人間が感じる基本的な味覚は5つとされています。「甘味」「塩味」「苦味」「酸味」そして「うま味」です。これらは本能的な感覚で、「甘味」は炭水化物のようなエネルギー源、「塩味」は食塩に代表されるミネラル類、「苦味」はある種の薬物、「酸味」は腐敗により生じるもの、「うま味」はタンパク質を表現するもの、原則的にこの5つを組み合わせで味を感じていると考えられます。
味覚は動物種によっても違います。ねずみは人と同じように5つの味を感じることができますが、猫は「甘味」を感じないので、人間が甘いと感じるものを与えてもちっとも喜びません。猫は「うま味」を「甘味」と同じように感じるため、魚や肉などのタンパク質に富む食品を与えると「これは甘くて旨い」と感じます。 一般的に子供がお茶やコーヒーよりも甘い飲み物を好むのは、それだけ本能的に生きているからです。動物の発達過程では、エネルギー源すなわち炭水化物をいかに確保するか、ということが最大の問題でした。タンパク質が体内に貯えられないのに対して、エネルギーは常に貯留しようとし、食事で得た余剰分を皮下脂肪として貯えます。もしエネルギー飢餓に陥ったら、身体中がその確保に努めます。 筋肉などのタンパク質も分解してエネルギーにします。身体を削ってでもエネルギーを産み出すわけです。
したがって、エネルギー源としての「甘味」に対して非常に敏感になるのです。激しい運動をした直後、ヒトはまず水を欲します。それが満たされると、ミネラルとエネルギーに対しての欲求がおこります。これが激しいと、味覚も変化し身体に必要なものは甘く感じるようになります。
普段は酸っぱいレモンも、運動後には果糖に敏感に反応し甘く感じた経験がありませんか。また、炭水化物は、ほとんどがグルコースという単糖類になって血液の中を流れ、脳まで達します。脳はグルコースしかエネルギー源として利用できないので、その濃度に非常に敏感です。一定基準を下回ると神経細胞が刺激され、お腹が空いたと感じます。この時、チョコレート等の甘い物を少し口にすると、すぐにグルコース濃度は上昇し、神経細胞に伝わり、「もっと欲しい」と感じるようになります。そしてインシュリンの分泌が促され、血糖値が低下し、空腹感が強くなります。少し食べると、いっそうお腹が空いてしまうのはこのせいです。グルコースを感受する神経細胞は、過去の飢餓を記憶していて、「エネルギーは摂取できるときにできるだけしておこう」という性質を持っています。
つまり一定の濃度を満たしてもまだ刺激を受けるのです。甘味を味覚に限らず視覚や嗅覚で判断したときでも、それを積極的に摂取しようとする性質があります。ビフテキに舌鼓を打った後、デザートに鰻が出ても「うま味」の感受性は満足しているので食べたいという欲求は起きませんが、アイスクリームやケーキのような甘いものは、たとえお腹が一杯でも、それを食べることを脳が認めてしまうので欲しくなるのです。
「ものを食べたいと思って(欲求)」最終的に「ものを食べる(行動)」という一連は、心理学、大脳生理学、薬理行動学などの要因が複雑に絡み合い、とても一言で説明できません。特にヒトが育ってきた環境や習慣によって味覚が異なるのは、関東と関西で味つけの違い等でもわかります。脳と本能と経験でその人の味覚が出来上がっています。ヒトの味覚は大変優れています。スポーツ後に水が飲みたくなり、レモンを甘いと感じられるように、不足している栄養素を味覚を通して敏感に感じることができるのです。 味覚を研ぎすためにも、日頃から好き嫌いせずに何でも食べる習慣を身に付けてください。味覚や嗅覚、また食行動も、今後の発展が楽しみな分野です。若い学生さんの中で、少しでも興味を持たれる方がいれば幸いです。
田島 清

生活習慣病予備軍
今まで「成人病」と呼ばれていたものが「生活習慣病」に改められることになりました。成人病と言うと、若い人は自分にはまだ関係ないから、と生活習慣を改めようとせず、病気の増加を食い止めることができないからだそうです。最近は、合宿中でも食事をしっかり食べない子供がいます。部活の後や塾の帰り、家路に着く前にお腹がすいて、ついついコンビニに寄って買い食いすることはよくあると思います。問題なのは、家で食事するまでの一時しのぎではなく、スナック菓子やカップラーメンでお腹をいっぱいにしてしまうことです。その結果、食事は入らないわけです。ポテトチップスでエネルギーは摂れても、肉や骨を作ったり体の調子を整える栄養分は摂れません。便秘がちだったり、風邪をひきやすかったり、どうも調子が良くないという人、食生活を振り返って思いあたるところはありませんか。お母さんの作った食事を食べていても、肉は大好きだけど魚や野菜はあまり食べない偏った食事をしている人、どこか調子が悪くありませんか。今は大丈夫でもそんなことを続けていると、慢性的な栄養不足になり、いろいろな病気を引き起こしてしまいます。スナック菓子や清涼飲料を止められないとしたら、あなたは立派な「成人病(生活習慣病)予備軍」です。食べたいものは食べたいし、若いからといって無関係ではありません。もっと食べることに関心を持ってみませんか。少し気をつけるだけで、今よりずっと体の調子が良くなるはずです。
栄養士A.Y