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No.09


論走
馬酔木賢者

スピードスケート男子五百メートル。誰よりも速くゴールを駆け抜けたのは、最も小柄な清水宏保選手だった。先輩であり、良きライバルの堀井選手の存在が大きかった。亡き父の情熱も家族の愛情もクローズアップされている。彼の感謝は尽きる事がない。休日返上でスケート靴の改良に明け暮れたスタッフ。時に我が儘な言動を素直に聞き入れてくれたエムウエーブの製氷係。彼等への思いやりも、応援してくれた総ての人達への感謝も忘れていない。そして、金メダルの褒章金の一部は長野パラリンピックと地雷撲滅基金に寄付するというのだ。「メダルにふさわしい人生を歩まねばならない」彼の眼は既に、遠い未来を見据えていた。グローバルスタンダード、頼もしい若者の誕生は、このオリンピックの最大の収穫と言えるだろう。彼の勇姿は忘れない、いつまでも。