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No.11


日本食のすすめ

味の解かる日本人
日本人の舌は敏感であるとよく言われます。味盲の割合が少ないのは確かですが、人間の舌の機能は民族間で大差がある訳ではありません。
味に敏感というのは、表現する語彙をどれほど多く持っているかなのです。旨味という言葉は日本特有で、UMAMIは世界でも共通語になっています。アメリカ人も旨味は感じているのですが、それに該当する適切な言葉を持っていないのです。外国人が日本に住むとKATAKORIになるのと同じ事です。日本では魚の名前を表す言葉も非常に多く、出世魚など、同じ魚でも成長段階によって異なる名前を付け、味わいの違いを楽しんでいます。こうした言葉がある事によって微妙な味を認識し、それを再現し、伝承していくのです。それが各地方、海岸部や山間部、関西や関東の「おらが国の味」になり、各家庭での「おふくろの味」になるという訳です。現在は「ダシ」離れが進み、若い人の嗜好は肉や脂肪の美味しさに移行しています。旨味と脂肪、前者はグルタミン酸ナトリウム、後者は脂肪酸。それほど違った物質ではなく、小腸では類似した物質として認識されます。しかしハンバーガーを食べた時に「口の中に脂肪酸がまったりと広がり・・・」などと、その脂肪の味わいを細かく表現できる言葉は日本にはありません。一般に男性の嗜好の方が保守的であるといわれます。なるほど、おじさん密度が高いのは、やはり蕎麦屋。国際標準(グローバルスタンダード)が叫ばれるなかにあっても、こと味に関しては「よくぞ日本人に生まれけり」でありたいものです。大石