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No.13


論走

注目の初対決。「凄い選手だね」。その卓越した投球術を見せつけられイチローは言った。振り子打法で既成の概念を打ち破った天才が絶賛した。その凄さとは何だろう。彼の野球は常に凡人の想像を遥かに超えてきた。その感触を得て、末恐ろしいというのが本音だったのかもしれない。しなやかなフォーム。二八〇キロを超えるという背筋力。柔と剛のシンメトリーは彼を一層鮮やかに輝かせ、未知の可能性を期待させる。危険球騒ぎにも動じず相手をマウンドから見下ろす様も、あの不敵な笑みも、これから起る奇跡の予兆に過ぎない。「自信から確信へ」。これから何をしでかそうと言うのだ。身震いであの夏の甲子園すら霞んできた。