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No.14


田島博士の特別栄養講座

買ってはいけない・・・は、買っても良いか?

食品など日用品の中に含まれる様々な化学物質の害を示した「買ってはいけない」と言う本が話題になっている。論拠の中に明らかな間違いや、一部分のマイナスを強調した断定的な書き方があり、様々な批判や反感を呼んでいる。「『買ってはいけない』は買ってはいけない」と言う本まで出た。実際に「食べもの」の項だけ読んでも、首を傾げる場合が何カ所もあって正しい意見だとは思えなかった。
問題はこの本自体にあるのではなく、読者側にあるのではないだろうか。多くの場合、この様な情報に対して余りにも無防備で、それを疑いもせず受け容れてしまうように思う。食品は実際にアミノ酸、ブドウ糖、ビタミンなどの化学物質で出来ている。いくら体に良いと言われている物でも、食べる量と頻度が大切なのだと、本紙では口酸っぱく指摘してきた。
○○は良い、××はダメ、という意見を鵜呑みにしないで、自分の尺度で考える知識を持ち、判断する事が大事である。ただ「買ってはいけない」が取るに足らないかと言うと、実はそうは思わない。問題を提起しているからだ。化学的環境の悪化が進んでいる、という事実に警鐘を鳴らしているのである。書いてある事は必ずしも正しくないが、かつて人類が経験した事がない程、多様な化学物質に囲まれている事だけは認識しておいた方が良いと思っている。


★「買ってはいけない」
週間金曜日別冊ブックレット
一〇五〇円
★『買ってはいけない』は買ってはいけない
夏目ブックレット 一〇五〇円



O157は眠っている?

細菌のVNC状態
環境中に生息している細菌は、必ずしもアクティブに活動している訳ではありません。むしろ休眠している物がほとんどです。しかも生きているのに人為的に培養出来ない事から、最近ではこれをVNC状態と呼ぶようになりました。自然界にいる細菌のほとんどが、この状態にあると考えられます。大腸菌O157が一般河川に普遍的に存在しながら今まで確認出来なかったのも、この為だと考えられています。VNC状態の細菌は、大半がそのまま死滅する運命にあると考えられています。しかし、中には活動(増殖)を再開する物があります。そのきっかけは、軽い熱処理や特定の有機物の存在など、実に多様で、未だ一定の見解が得られていません。これは病原性細菌による被害を未然に防ぐ為に重要な鍵であり、微生物生態を研究する私達が解明しなければならない重要な課題なのです。