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No.19


田島博士の特別栄養講座

狂牛病を考える(その一)

たった一頭の牛が、ここまで大きな波紋を広げるとは誰も考えていませんでした。食用肉の他、乳製品、飼料や肥料、食品の原材料に到るまで、その影響は深刻です。御存じのとおり、ウシやヒツジ、ヤギは草を食べます。これら反すう家畜はどんな特色を持っているのでしょうか。胃は四つあり、一つ目の胃に多くの微生物を棲まわせており、これを反すう胃と言います。その微生物が牧草の繊維を分解、利用して増殖します。増殖した微生物は、そのまま下部消化管に流れていき、消化酵素の働きで分解吸収されて、ウシの腸から栄養素として吸収されます。微生物が良質なタンパク源となって、草食のウシでも身体が造られて成長します。反すう家畜は、他の動物と食べ物の競合が生じないのが一番の特徴です。牧草を主体にした本来の飼育を行っていれば、狂牛病問題は回避出来たのかもしれません。


狂牛病を考える(その二)

青々した牧草地で草を食む牛の姿は、心を和ませるものです。日本では北海道や一部地域でしかそうした風景を目にすることは出来ません。限られた土地で効率よく家畜を飼育するためには、栄養価の高い穀類や動物性飼料などが不可欠です。家畜が一日に成長する割合も大きくなり、牛乳の量も昔よりはるかに多くなっているので、牧草だけでは栄養不足になってしまうのです。牧草や稲わらよりも、穀類の方が単価が安いことも原因の一つになっています。狂牛病問題は、こうした生産性重視の方法に一石を投じたとも言えます。生産者も消費者も今一度、日本の農畜産業について考えを改める時かもしれません。多くの方が正しい知識を持ち、賢明な判断をして下さることを切に願っています。