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No.16


栄光のメダリスト シドニー五輪・男女マラソン
高橋尚子選手・エリックワイナイナ選手 心で走った

栄光のメダリスト シドニー五輪・男女マラソン

見事にメダル獲得
大らかな快活さを持ちながら、日本でトレーニングしている二選手がメダルを獲得した。肉体的にも精神的にも過酷なマラソン。絶好調と故障はいつも背中合わせだ。組織のシステムにも添わなければならない。あらゆる困難を乗り越えてはじめて、スタートラインに立てる。レースでは、プラスαの力が必要となる。二人は勝つ為にレースを自分で組み立てた。この自発的な考えが良い結果に繋がり、人に感動を与えた。周りを牽制し過ぎたり、予想外のペースや気候条件に翻弄されてしまう日本選手が多い。条件が変わると自分まで変わってしまう。二人は余裕を持って走っていた。レースがどのように進んでいるかを冷静に見て、自分の走りと照らし合わせていた。状況に即応するしなやかさがあった。身体と対話しながら走った、と言う高橋選手の様に、監督が指示を出しても、最終的に判断を下せるのは自分自身でしかない。そして勝負所を逃さなかった。走るのが好きだから自分のレースをして勝ちたい、その気持ちが、身体を引っ張っていく。紛れも無く心で走っている。二人にはマラソン選手特有の悲愴感が感じられない。ワイナイナ選手も金メダルが取れなかった悔しさを露にするのかと思えば、満面の笑みで観客に応えていた。高橋選手も「終ってしまって残念」と笑顔で言っている。まるでガラス細工の様に触ると壊れそうな心では、自身の殻を破る事は出来ない。すべての選手がもっと大らかに、快活に、競技と向かい合って欲しい。

アテネでは金メダル
シドニーに向かう朝

「これから行ってきます」エリックから電話が入った。いつもと変わらない陽気さだ。「気をつけて行ってこいヨ」成田に向かう車の中からだった。やがて銀メダルを持ってエリックは凱旋した。全くなんてヤツなんだ。来日したばかりの頃、グランドの片隅で寂しそうに立っていた彼に声を掛けたのが、知り合うきっかけだった。その時から、世界チャンピオンになると言っていた。アテネで金メダルを取ると祝賀会で宣言していた。満面の笑みと白い歯を覗かせて。
(伊藤)

ランナーの意識改革

競技者である前に人として、また社会人としてあるべき姿や、競技を通じて果すべき事柄を考えて欲しい。海外へ進出した選手や来日している外国人選手からもっと学ぶべきだろう。何の為に走っているのか、自己の考えを確立していかなければ真の競技者にはなれない。競技生活を保証されている選手は、仕事として求められている社会的責任を考えよう。諸外国の金メダリストのインタビューを聞くと、必ず何らかの形で社会に貢献しようとしている。残念ながら日本選手の口からは聞く事はない。記録や成績の事ばかり。一流のパフォーマンスは、不安な社会や人の心に光りを与えてくれる。競技に携わる人はすべて、それを忘れてはいけない。走る事にはどんな人をも感動させる力があるのだから。   (山根)

サッカー・アジア杯優勝
トルシエジャパン・・成果は確実に表れている

「選手には技術も体力も備わっている。足りないのは経験だけだ」アジア杯で日本が優勝した。五輪の決勝トーナメント出場に続いて、目覚ましい進歩を遂げている。一時は継続の是非が問われたトルシエ監督の思惑が結実した感がある。Jリーグ発足以来、日々進化してきた。優秀な外国人選手や監督を招き、海外の試合にも参戦する機会が増えた。中田や名波、城の様に海外のリーグへ進出する選手も生まれ、にわかに国際化が進んでいる。若手の育成から始まったトルシエ監督の計画は、長い目で見たチーム作りだった。とにかく国際試合を経験させ、選手自らが手応えを感じ、理想の高いプレーを目指す様に、方向づけしてきた。経験の必要性については中田はこう言っている。「国際試合の経験がそのままチームの力になる。日本は今、強い相手と戦い、自分達の力を計る事が大事なんだ」その成果は確実に表れている。相手がブラジルであろうと、臆する事もなく、ゲームに臨んでいる。力を養うには経験しかない。これはサッカーに限らず、すべてのスポーツに言える事だろう。指導者の仕事とは、良い経験を沢山させてやる事に尽きる。そして、選手は恐れる事なくチャレンジし、燃え尽きるまではやらない事だ。肝心なのは、モチベーションを高める事にある。どの種目においても自立心旺盛な選手が国際舞台では活躍している。